特定の農薬がパーキンソン病を引き起こすことが発見されたきっかけはヘロインだった 10
むしろ薬物の恐ろしさのインパクトのほうが 部門より
「rotenone」や「paraquat」といった農薬にはパーキンソン病との関連性があることが報告されているそうだが、この関連性が発見されるきっかけはヘロイン中毒者の症状だったそうだ(Slashdot.org、Chemical and Engineering News記事)。
1982年、当時42歳だったGeorge Carillo氏という男性が、全身硬直した状態でカルフォルニア州Santa Clara Valley医療センターに搬送された。その症状は進行したパーキンソン病の症状に似ており、Carilloのガールフレンドも同じ症状であった。この二人にパーキンソン病治療薬のレボドパを投与したところ二人は再び動き回れるようになった。同時期に、同じ症状の患者4人がサンフランシスコ近郊の医療センターで治療を受けていた。6人の共通点はヘロイン中毒者であり、ヘロインに似た合成麻薬を注射していたことだった。
1980年代頃、LSDやモルヒネと同様の幻覚作用をもたらしつつ、違法薬物の法律をすり抜ける合成薬物の調合が行われるようになっていた。そのなかの一つに、鎮痛剤のDemerolの5倍もの効力を持つされるMPPPがあるのだが、このMPPPの合成を早めるために反応温度を上げた結果MPTP合成物が生み出されることとなった。このMPTPは、全身硬直の症状に見舞われた6人の所持していた薬物サンプルから検出されたのである。その後、サルを使った実験でMPTPがパーキンソン病の症状に似た全身硬直を起すことが証明された。
1984年カルフォルニア大学の研究チームが、MPTPの代謝物質MPP+が全身硬直を引き起こしていることを発見した。MPTPは脳内で神経細胞を殺すMPP+に変換されることが分かったのである。またMPP+が、「cyperquat」という名前で1970年代に製造されていた農薬と同じ物質であることも分かったのだという。現在cyperquatは使用されていないものの、同系列の農薬「paraquat」は現在も使用されており、2007年に行われた調査によれば、米国で最も使用されている農薬の25位内に含まれるという。